ネット上で急増するZ世代の過激化 進化する脅威

1.はじめに
今回は、Saman Ayesha KidwaiによるThe Print上のレポート「How Gen-Z is changing the violent extremist landscape online (https://theprint.in/opinion/gen-z-extremist-online-landscape/2817230/)」を紹介する。近年、Z世代が分散型デジタルプラットフォーム(SNS、ゲーム)を通じて過激化する傾向が加速している。Z世代は、ソーシャルメディア、ゲーム環境、暗号化チャットフォーラムといった広範なデジタルプラットフォームを活用することで、暴力的な過激主義の様相を劇的に変えてきたとされている。これらの新しい過激派勢力に対抗するためには従来のような対策では不十分であり、それぞれの要素を理解し効果的な対処法を生み出すことが重要だと筆者は指摘する。
2.過激化の背景
今日出現した暴力的な過激主義の様相は、デジタル領域の分散化と民主化、そしてZ世代(1997年から2012年生まれ)の若年層へのアクセスが原因とされている。
通常のSNSから過激派コミュニティに勧誘される初期の要因は、少なくとも初期段階では特定のイデオロギーとはあまり関係がないことが知られている。これは、国家の社会経済的地位や軍事・諜報上の優位性にかかわらず、国家の対暴力的過激主義(CVE)戦略における主要な抜け穴の一つであり、過激派のリクルーターが広く利用している事実である。
オンライン空間における暴力のゲーミフィケーション化、ミーム化もまた、現実のコミュニティにおける若者の間で暴力行為の正常化を促進する中心的な役割を果たしている。特に、Z世代は、例えばInstagramで流行しているリールやおすすめ動画を延々と見続ける「ラビットホール現象(自分の興味のあるコンテンツにのめり込み、抜け出せなくなること)」に陥りやすいとされている。こうしたコンテンツは過激な意見や思想、ミーム、衝撃的な動画や画像と融合し、終わりのないループを形成するとレポートは指摘する。
加えて、個人がメンタルヘルスの問題を抱えている場合、過激化の傾向はより悪化する可能性がある。その兆候が長期間にわたり無視されたり見過ごされたりすると、過激化がより加速するとされているのである。実際、ユーロポールによる報告書によれば、10代の若者が過激化してしまう主な要因は「メンタルヘルスの問題、社会的孤立、デジタル依存」とされている。これらの要因は、物理的領域とデジタル領域の両方で、志を同じくする若者のコミュニティ形成に根本的な役割を果たしてきた。
3.過激派の若年化とデジタル・グルーミング
最近では、前述のようなオンライン過激派の若年化が指摘されている。例えば暴力的な過激派の逮捕者の平均年齢は15歳であり、欧州とオーストラリアで逮捕された個人の18~20%を占めており、これは若年層の過激化が進む傾向を反映している。過激派の勧誘が10代を標的としながらも、さらに低年齢層へ拡大している実態を詳述した。報告書の重要な指摘の一つは、欧州と北米では8~9歳の児童までもが過激派勧誘者によって洗脳されている事実だ。その結果、2021年から2025年にかけて、これらの地域におけるテロ関連犯罪の捜査件数は42%増加したと言われている。例えば2021年1月、シンガポールで2つのモスクを襲撃しようとした事件に関連し、わずか16歳の少年が逮捕された。このシンガポール人少年は、2019年3月にニュージーランド・クライストチャーチで発生した虐殺事件のオンライン宣言文と生中継に感化されていたとされている。
Z世代の若者が過激派リクルーターに動員されている事例も存在する。彼らは国境のないデジタル空間において、不安やアイデンティティ危機、帰属意識や反抗心といった欲求を悪用する。過激派リクルーター、あるいは自らをデジタルリーダーと称するリクルーターは、影響を受けやすい若者に、本来欠けている共同体意識・帰属意識・目的意識を提供するとされる。
4.ビデオゲームと過激化の加速
レポートでは、若者の過激主義が加速する要因としてビデオゲームへの関与とその後の過激化との相関関係を指摘している。これは、ビデオゲームそのものの内容よりも、ゲームプレイに費やす時間が、個人が過激化し権威主義的・過激主義的世界観を表明し始めるかどうかに大きな影響を与えることを示唆している。
これは、マルチプレイヤー型ビデオゲームに参加する潜在的な勧誘対象者が、チャット機能などを通じて過激派勧誘者と交流するインタラクティブな環境に入り込む可能性があるためであり、繰り返される交流を通じて、彼らは社会的・感情的・信頼関係を結ぶ。こうした繋がりが確立されると、勧誘者は新規加入者を育成し、暴力的な過激派行為への参加や準備段階への関与を促しはじめる。時間の経過とともに、こうした新兵が草の根レベル、つまりマイクロセルや支部レベルで徐々に主導権を握り、後に著名な指導者が逮捕された場合には代わりに指揮を執るようになる。さらに、ドミノ効果として、こうした個人が仲間や年下の家族、その他のコミュニティメンバーを過激化させることで新たな過激主義の波が生まれ、過激化の領域が増大していくとレポートは述べる。
5.対策の限界
現代の若者に対する脅威を事前に検知し対処する難易度は上昇していると筆者は指摘する。オンライン空間やフォーラムが、個人や国家体制に対する暴力を助長する複数の過激派グループを結びつけることで、暴力的な過激主義に新たな次元を開いたためであり、世界的な暴力過激主義の枠組み内でのこの変異は、潜在的な過激化した安全保障上の脅威を検知し無力化する作業をより複雑なものにしている。
脅威検知に関連する課題は、主に過激主義イデオロギーや傾向の重なりから生じるとされており、これによって明確に定義された属性・範囲・イデオロギー・敵対対象・意図を持たない新たなハイブリッドな脅威が出現する。結果として、こうした前例のない脅威を無力化する見通しはさらに困難となる。一般的に、国家はこのような過激化の広範な脅威に対抗するため、事実に基づくナラティブ構築、法執行機関による摘発や拘束、あるいは過激主義後の脱過激化プログラムに依存する傾向にある。代わりに必要とされるのは、人工知能の力を活用するなどして、視覚的に魅力的で、信頼性が高く、感情的に共鳴する対抗ナラティブを創出することが重要だとレポートは提案する。
6.結論
各国は国家安全保障の枠組みを見直し、従来のテロ対策から、組織や思想が流動化したオンライン中心の暴力的過激主義に対応する予防型政策へ転換する必要がある。そのため、立法改革と統一ガイドラインの下で中核機関がSNSや動画、暗号化チャット上のプロパガンダをリアルタイムで抑制し、デジタル企業と連携してアルゴリズムを改善し、過激コンテンツの拡散機会を減らすことが求められる。同時に、生成AIやショート動画、ゲームなどを活用した感情的に訴えるデジタルリテラシー教育を進め、若者の抵抗力を高めるべきである。さらに、コミュニティや教育機関、家族、インフルエンサーと協働し、心理的・社会的要因に働きかける包括的な支援体制を構築することが不可欠であるとレポートは指摘する。
