極右過激派が計画する「白人専用コミュニティ」

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目次

1.はじめに

今回は、アメリカにおいてヘイト・極右過激主義についての調査を行うNGO「Global Project Against Hate and Extremism(GPAHE)」が発表したレポート「A “Who’s Who” of Global Far Right Extremists Gathered to Share Plans for Whites-Only Communities」https://globalextremism.org/post/global-far-right-extremists-gathered/)を取り上げる。このレポートではアメリカ合衆国や欧州を筆頭とする白人至上主義の指導者たちが開催した、世界中に「白人専用コミュニティ」を建設するための会議について取り上げている。またこのレポートではその中心となる米国の白人至上主義団体「Return to the Land」についても詳しく分析している。

2.白人至上主義者のための会議

この会議は、米国の白人至上主義団体「Return to the Land」(RTTL、自らを「目的共同体(理想や目標などを共有する人々が一般社会とは異なるルールで生活する集団のこと)」と称し、白人系の人々のみが居住できるコミュニティを自らの土地で運営している)の創設者兼リーダーであるエリック・オーウォールが主催した。RTTLは白人至上主義の思想を持つ者を厳選しているとされている団体である。
リベラリズムや多文化主義への拒絶、ヨーロッパ社会の「保存」の試みと称されるRTTLでは、オーウォールはメディアの注目を利用して国際的な極右勢力にネットワークを広げ、自身のプロジェクトを推進してきたとされる。彼の主催する第2回オンライン「目的共同体会議」には、複数のネオナチ団体、人種差別的ネットワーク、ユダヤ人を悪魔の子孫と信じるキリスト教分派、その他の過激派からさまざまな活動家が集結し、白人以外を排除する共同体プロジェクトについて議論した。

3.グレート・リプレイスメント

オーウォールの主催した会議には、白人ナショナリストによるコミュニティ構築運動の中心人物16人が登壇した。中でもスウェーデンのダン・エリクソン は、集会所や不動産を取得して極右の活動拠点を整備するDet fria Sverige(DFS)を率い、ネオナチ運動や暴力事件との関係、強硬な反移民発言で知られる。同団体の施設は国際的ファシスト系運動の会合にも利用され、資金集めや施設拡張を進めている。また英国からはマーク・コレットが参加した。彼はPatriotic Alternative(PA)を創設し、白人民族国家の形成や「グレート・リプレイスメント(移民の増加で白人が社会の中で少数派となり、立場を失うと訴える陰謀論)」論を訴えて支持を拡大してきた人物である。会議でコレットは、British National Party(BNP)のスタッフ、そして最終的には候補者として活動した時代について語り、党のパンフレットを配布した地域が、白人が多数派だった地域から「多文化コミュニティ」へと変化していく様子を嘆いた。
「リプレイスメントは現実だ。陰謀論などではない」と彼は聴衆に語った。「これは我々に対する陰謀だ。我々を憎む権力者たちによる陰謀だ。そしてこのリプレイスメントは、君たちが思っている以上に早く進んでいる」。
2026年1月、コレットはロシアのオリガルヒ、コンスタンチン・マロフェエフが主催した会議で演説を行った。マロフェエフは銀行家であり、クレムリン系メディアグループ「ツァーグラード(Tsargrad)」の所有者である。コレットは極右主義者数名の講演者の一人であり、その中にはアレクサンドル・ドゥーギンも含まれていた。ドゥーギンはロシアの政治哲学者であり、その理論は欧州全域の極右団体に影響を与えている。コレットはガーディアン紙に対し、自身の発表における発言は白人英国人の少数派化と「東欧諸国が自国で同様の事態を許してはならない」という点に焦点を当てたものだと語った。全体として、各国の極右勢力が拠点整備とネットワーク化を進め、排外主義を現実政治に結び付けようとする動きが浮き彫りになったとレポートは分析している。

4.複合体とコミュニティ

英国から同会議に参加したサイモン・バーケットはPAやBNP、National Frontといったファシスト系英国政党と関係を持ち、土地取得で白人居住地を作るThe Woodlander Initiative(TWI)を主導。人口問題の解決として「2000万人近い人々の再移住・強制送還」を訴えた。彼はさらに「(再移住は)実現可能ではあるが、莫大な問題を引き起こすだろう。いずれにせよ、人々は自分や子供たちのための安全な居住地を求める。我々こそがそれを提供できるのだ」と付け加えた。
米国からはウィル・ウィリアムズが登壇し、ネオナチ団体National Alliance(NA)の思想と土地拠点を紹介した。白人限定宗教団体Asatru Folk Assembly(AFA)も参加した。さらにトーマス・ルソー率いるPatriot Front(PF)は行進や施設整備で勢力拡大を図り、報道を宣伝に利用するという手法を共有している。宗教的白人至上主義を説くイスラエル教会(Christian Identity系教会、CI)の発言もあり、各団体が土地・施設・宣伝戦略を通じて排外的ネットワークを強化する実態が示された。

5.RTTLの目的と野望

RTTLは近年、世界中の主要メディアでその活動が複数回にわたり大規模な特集記事として報じられるなど、大きく知名度が上昇したとされている。報道内容は概して否定的だが、パトリオット・フロント同様、知名度が上がりさえすれば、どのような宣伝も「良い宣伝」だと組織内では見なされているようだ。
序章で述べたオーウォールらRTTLメンバーが居住するアーカンソー州の土地は「コミュニティ1」と命名されている。これは同団体が人種差別的な開拓プロジェクトを全米、そして世界へ拡大する計画を示唆するものだとレポートは指摘する。アメリカ・オザーク地方の主要拠点に加え、オーウォールはテキサス州を含む他州にもメンバーが存在すると示唆した。ただし同州内では法的障壁が存在し、同様のRTTLコミュニティ構築は困難だとされている。
州がRTTLプロジェクトを事前に阻止する法律を起草したり、上級メンバーを巡る詐欺疑惑など重大な挫折があったにもかかわらず、オーウォールは全くの無名活動家から急速に台頭し、国境を越えた極右勢力内で重要な存在となった。オーウォールはこの注目を利用して、国境やネットワーク、イデオロギーを越えて憎悪に満ちたコミュニティを結びつける役割を果たしているとレポートは指摘している。

6.参加団体・関連団体および取り上げられた人物

  • エリック・オーウォール(Return to the Land創設者・リーダー、今回の会議の主催者)
  • ダン・エリクソン(Det fria Sverige(DFS)リーダー)
  • マグヌス・セーデルマン(DFS共同リーダー)
  • マーク・コレット(Patriotic Alternative(PA)創設者・指導者)
  • サイモン・バーケット(Woodlander Initiative(TWI)リーダー)
  • ウィル・ウィリアムズ(National Alliance(NA)リーダー)
  • ディロン・ロウ(NA会員コーディネーター)
  • クリフォード・エリクソン(Asatru Folk Assembly(AFA)指導者)
  • トーマス・ルソー(Patriot Front創設者・リーダー)
  • ウィリアム・ピアース(NA創設者および『The Turner Diaries』著者)
  • コンスタンティン・マロフェエフ(ロシアのオリガルヒ、Tsargrad所有者)
  • アレクサンドル・ドゥーギン(ロシアの政治哲学者)
  • ナイジェル・ファラージ(Reform UK Party指導者)
  • ジャレド・テイラー(American Renaissance主宰者、白人至上主義活動家)
  • トーマス・シューウェル(オーストラリアのネオナチ活動家)
  • オースティン・バタロフ(Israel Church関係者/Christian Identity指導者)
  • Return to the Land(RTTL)
  • Det fria Sverige(DFS)
  • Patriotic Alternative(PA)
  • The Woodlander Initiative(TWI)
  • National Alliance(NA)
  • Asatru Folk Assembly(AFA)
  • Patriot Front(PF)
  • Vanguard America(VA)
  • Active Club Network(Active Club)
  • British National Party(BNP)
  • National Front
  • Info14
  • Heritage and Destiny
  • Reform UK Party
  • Israel Church
  • American Renaissance
  • National Socialist Network
  • European Australian Movement
  • White Australia Movement
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この記事を書いた人

茨城県出身の2003年生まれ。軍事・非軍事を問わず安全保障に興味を持っている。専攻は日米関係史だが主に東アジアの安全保障体制を扱っている。専攻外では中世ヨーロッパにおける政治体制の勉強が趣味。とくにポーランド・リトアニア共和国における民主制が対象。

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