海外からの干渉について想定すべき5つのこと

国内の特定の政党へのロシアの関与などSNSで話題になり、海外からの干渉はあったと官房副長官が発言した。海外からの干渉について考える際に、想定しておいた方がよいことがいくつかあるのでご紹介したい。
1.海外からの干渉の影響の評価は難しく、干渉の証明も難しい
海外からの干渉の影響として、「民主主義への脅威」、「社会の分断の拡大」、「選挙結果が歪められる」などがあげられる。本来、影響は「行動」などで計られるべきものですが、「行動」まで検証した調査はほとんどない。
2.近年の海外からの干渉の多くは効果がないことが多い
ここ数年の主要な関係機関の事例に関するレポートを読むと、その多くで効果がなかったか軽微だったという結論のことが多い。前項で影響評価はほとんど行われていないと書いたのと矛盾するようだが、「行動」に影響を与える前段階でそもそも情報が拡散しなかったなどを根拠に書かれているので、おそらくその通りだ。近年、報道や政府発表は多いが、そのほとんどは影響がほとんどなかったのである。
3.海外からの干渉や偽・誤情報に関する報道は過剰になる傾向がある
影響が検証されていないあるいは影響がほとんどないにもかかわらず、多くのメディアが報道したがる。
メディア報道は859件の誤・偽情報に関する記事を掲載していた。2017年以降の増加が見られ、2016~2018年には、大見出しの91%が「Fake news」という用語を使用していた。2019~2022年には、大見出しの80%が「misinformation」に言及していた。このパターンは4つのニュースメディアすべてで一貫していた。
これはアメリカのメディアについての分析だが、いかに多かったかわかる。
4.過剰な報道は情報に対する過度な警戒心や不信感に結びつき、社会不安を煽る
情報に対して慎重に接することは重要だが、過度に警戒心を持つことは逆効果になることも多い。現状の多くの報道のようにほとんど影響のなかった干渉について警告を発することは警戒主義と呼ばれ、情報に対する過度な不信感を煽る危険がある。
5.暴露されることで、影響を与えることも想定している作戦もある
暴露されることで「3.」と「4.」を引き起こし、影響を与えることを考えていたことがわかっている。
ロシアのドッペルゲンガー実施企業Social Design Agencyの2.4GB漏洩文書
https://inods.co.jp/topics/4161/
ロシアのオペレーション・オーバーロード 第3の報告書
https://inods.co.jp/topics/6545/
・一部のファクトチェック団体やメディアは影響の少ないコンテンツを報道することで拡散を助けている。注意が必要である。
・ファクトチェック団体やメディアはこの作戦などの記事を控え、掲載する場合には明確な文脈(記事化による拡散を狙っている可能性)を付け加えるべきである。
カナダで公開された報告書では、干渉そのものの影響よりも、メディアによる不完全な形でのリーク情報の公開によって国民に不信感と不安が広がった影響が大きかったと評価している。
もうひとつの偽・誤情報対策 カナダで最終報告書
https://inods.co.jp/topics/5165/
最後に、今回の件に関してはすでに昨年の段階でアメリカのDFRLabが部分的に今回につながるレポートを公開していた。この段階できちんと精査しておけば今回のことは未然に防げた。また、メディアもこのDFRLabのレポートやカナダの報告書を報じ、そこから学んでいれば適切な報道ができた。
DFRLabによる日本のX空間への中露ナラティブの分析
https://inods.co.jp/topics/4839/
今回の官房副長官の発言(情報は不完全で透明性に欠けている)はカナダで起きたことをさらに悪くしたものであり、海外からの干渉への対応の悪い見本となった。
影響が未検証のまま対策や法制度の整備に進むことは効果が期待できないだけでなく、逆効果となる可能性も高く非常に危険で、それこそが相手の思う壺なのである。