米中のプロパガンダ・エージェントと化すAIボット

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最近、トランプはAIに関する一連の大統領令にサインした。そのひとつで、トランプが主張する反DEIを支持するAIだけが正しいものであり、米政府機関で利用できるとした。ChatGPTをはじめとするアメリカのAIボットはこの大統領令に従う可能性が高い。世界中で利用されているこれらのAIボットはトランプの主張を拡散するプロパガンダ・マシンとなる

PREVENTING WOKE AI IN THE FEDERAL GOVERNMENT
– Executive Orders

https://www.whitehouse.gov/presidential-actions/2025/07/preventing-woke-ai-in-the-federal-government/

一方、中国の主要AIボットも台湾選挙や米台関係について親中の虚偽の回答を行っていることが、NewsGuard社の調査でわかった。中国は中国で百度やDeepSeekなどの AIボットを自国のプロパガンダ・マシンにしていたわけだ。

Chinese AI Models Register a 60 Percent Fail Rate in NewsGuard Audit of Pro-China Claims – NewsGuard
https://www.newsguardtech.com/special-reports/chinese-ai-models-60-percent-fail-rate-pro-china-claims/

問題はそれだけに留まらない。LLMはじょじょに検索エンジンを代替しつつある。たとえばグーグルで検索すると、AI要約がトップに表示されることがよくある。その表示内容がトランプの主張に沿ったものに変わる。中国に行けば親中の内容に偏向される。米中それぞれの勢力圏でAIによるフィルターバブルを作り出そうとしていると言える

米中は次のステップとして、各国のAIインフラを押さえようとしている。中国のGlobal AI Governance Initiative(GAIGI)、OpenAIのStargateがそれにあたる。そのAIインフラを通じてそれぞれの世界観に沿った世界が構築されることになる。

AIはこれまでも中立的ではなく、むしろ偏見が増強される傾向があったが、これからは米中が意図的に自国のプロパガンダを広めるために偏向したAIを世界に向けて提供してゆくことになる。これからのAIは検索結果、リコメンドあるいは、情報の要約、翻訳それらのすべてに親中もしくはトランプの偏向が反映されることになり、AIによる生産性向上に酔いしれて気づかず利用することで利用者はどちらかのプロパガンダの拡散者となっていく。独自のAIモデルを持たない国はどちらかを選ぶしかない。

もしかすると、読者の中にはこれが問題だと思う方がいるかもしれない。しかし、現在進行形の脅威の中で避けられないことでもある。相手国のプロパガンダに対抗するには自国のプロパガンダ、ナラティブにはナラティブで対応、アメリカも日本も多くの国が浅慮な対症療法しかしてこなかった。もし、こうした問題をなくしたいと思うなら、新しい世界のあり方を提案するしかないのだ。これまでのやり方で行き着いたのが現在の世界である以上、新しい方法でなければ解決しない。

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この記事を書いた人

複数のIT企業の経営にたずさわった後、2011年にカナダの永住権を取得しバンクーバーに移住。同時に小説家としてデビュー。リアルに起こり得るサイバー犯罪をテーマにした小説とネット世論操作に関する著作や評論を多数発表。代表作として『原発サイバートラップ』(集英社)、『天才ハッカー安部響子と五分間の相棒』(集英社)、『フェイクニュース 新しい戦略的戦争兵器』(角川新書)、『ネット世論操作とデジタル影響工作』(原書房)など。
10年間の執筆活動で40タイトル刊行した後、デジタル影響工作、認知戦などに関わる調査を行うようになる。
プロフィール https://ichida-kazuki.com
ニューズウィーク日本版コラム https://www.newsweekjapan.jp/ichida/
note https://note.com/ichi_twnovel
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